卒業設計中間発表


私は人が日常という形で直接に関わっている領域においてつくられている空間に興味を持ち始めてから、東京をヒューマンスケールで歩いてまわることを続けています。
その中で次第に家と道との境界につくられる空間、つまり「庭」と呼ばれるような空間に特に惹かれるようになり、
卒業研究では東京における「庭」という概念を掴むことを目指しました。
パネルの写真は「庭」として捉えた空間を残したものです。
しかし写真の通り、一般的なイメージの庭、計画的に草木・池などを配置し、整えられたものではありません。
見落とすほどに小さいもの、趣旨のわからないような不思議なもの、しまいには植物を使っていなかったり、土地を必要としていないようなものだったりと、
ありそうにない所、あり得ない所に出来やすく、
とても庭とは言い難いような代物ばかりです。
しかしそれらの「庭」はいくら狭くても広がりを感じます。
見ているとその人の世界や夢などの想像が膨らむのです。
東京の「庭」は“広いか狭いか”でもなく、実際に手に入る空間を求めているようでもなく、
彼らは実際には手にしていないけれども手にしているように見える感覚を求めているように思えます。
その感覚は東京に住んでいる限り元々手に入れること出来るわけがないという欠如から生まれてきているのかもしれない。
しかしそのような感覚には、物質的な空間の奥にさらに脳を使って感じられる空間があります。
目に見える空間と目に見えない空間が共に感じられる壮大な空間です。
そのような空間の捉え方、解釈にヒントを得ながら卒業制作に繋げていきたいので歩くことはしばらく続け、
卒業制作では、普段使っている場所を舞台に、鑑賞者に想像を膨らませ得るような空間、入り込める余地のある作品を考えたいと思います。

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